パープルラッフルバジル

パープルラッフルバジルとは

パープルラッフルバジル(学名:Ocimum basilicum ‘Purple Ruffles’)は、葉が深い赤紫色で縮れた縁取りを持つバジルの品種です。通常のスイートバジルと同じシソ科メボウキ属の一年草であり、芳香のある葉はやや甘くスパイシーで、アニスやシナモンを思わせる風味が特徴です。1980年代にアメリカで開発された園芸品種で、1987年にはオールアメリカセレクション(AAS)の受賞歴もある優れたハーブです。観賞価値と実用性を兼ね備え、ガーデニングから料理まで幅広く活用されています。

パープルラッフルバジルの特徴と栽培方法

特徴と育てやすさ

パープルラッフルバジルは、濃い紫色の大きな葉とピンク色の花穂が美しい品種です​。葉は7~8cm程の長さで縁がギザギザと波打ち、表面は光沢があります。成熟すると高さ30~60cm程度のこんもりとした株になり、晩夏から初秋にかけて穂状に淡いピンク~紫色の小花を咲かせます。

この花も食用可能で、サラダの彩りや飾りつけに利用できます。見た目の美しさから観賞用ハーブとしても人気があり、花壇やコンテナで栽培すればコリウスのような鮮やかな彩りを与えてくれます。一方で、香りと風味はスイートバジルと遜色なく、料理にも十分活用できるため「一石二鳥」のハーブと言えるでしょう。

栽培条件(発芽・日照・水やり・肥料)

発芽と温度: 種から育てる場合、発芽適温は摂氏18~21℃程度とされ、暖かくなってから播種します。霜に弱いため、屋外では遅霜の恐れがなくなった時期に種まきや苗の植え付けを行いましょう。

種は浅く(6mm以下)土にまき、覆土は薄くするか光発芽性のためごく軽く抑える程度にします。土壌水分を保ちながら管理すれば、発芽までおよそ5~10日です。 日照: パープルラッフルバジルは日当たりを好み、少なくとも1日6~8時間以上の直射日光が望ましいです。

日照が不足すると徒長しやすく、葉色も薄くなる傾向があります。一方、真夏の強い日差しの下では環境によって葉が部分的に緑色がかる個体もあり得ます。鮮やかな紫葉を維持するには十分な日光と適度な栄養条件を整えることがポイントです。

水やり: バジルは水を好みますが、過湿による根腐れは避けねばなりません。土は水はけが良く、かつ適度に保水力のあるものを選びましょう。表土が乾き始めたらたっぷりと水やりをし、葉に直接かからないよう根元に注水します。コンテナ栽培の場合は土の乾きが早いので、朝晩の様子を見て頻繁に潅水してください。

土と肥料: 有機質に富んだ土壌を好むため、植え付け時に堆肥や緩効性肥料を用土に混ぜ込んでおくと生育が良くなります。生長期には約4~6週間ごと、または収穫後に少量の追肥を施すと長く収穫が楽しめます。

特に鉢植えでは養分が不足しやすいので、薄めの液肥を定期的に与えてもよいでしょう。ただし肥料過多は香りを損なうこともあるため控えめを心がけます。 間引きと植え付け: 発芽後、本葉が2~3対出た段階で株間15~20cmになるよう間引きまたは植え替えを行います​

苗を定植する際も株間約45cm(18インチ)を目安にスペースを確保してください。株間を広めに取ることで風通しが良くなり、病害虫の発生も抑えられます。地植えの場合は株が直径60cm近くまで大きくなることを考慮し、ゆとりを持ったレイアウトにします。 収穫と手入れ: 初夏~秋にかけて随時収穫できます。草丈が15~20cm(6~8インチ)に育ったら先端を摘み取り始めましょう​

収穫の際は茎の途中で葉を数枚残して剪定すると(節のすぐ上でカット)、脇芽が伸びてより株がこんもりと茂り収量が増えます。開花が近づくと葉に苦味が出るため、花穂ができ始める前にこまめに摘芯・収穫すると良い香味の葉を保てます。摘んだあとの枝には新芽が出て再生しますが、一度に全体の3分の1以上を収穫すると株が弱るので注意します。

適切な剪定と摘心を続ければ、パープルラッフルバジルは暖かい季節を通じて次々と新葉を出し、長期間にわたり収穫を楽しめます。

パープルラッフルバジルの料理レシピいろいろ

パープルラッフルバジルは通常のバジルと同様に、さまざまな料理に活用できます。紫色の美しい葉は料理の彩りにもなり、見た目にも楽しいアクセントとなります。

ここでは、このバジルを使った具体的なレシピ例をいくつか紹介します。
彩りトマトとパープルバジルのサラダ: 新鮮なパープルラッフルバジルの葉を手でちぎり、完熟トマトの角切り、オリーブオイル、塩、にんにく少々と和えます。

ジュージーなトマトに紫のバジルが映え、パスタに乗せてブルスケッタ風に楽しむこともできます。簡単ながら風味豊かな一品です。

パープルバジルのジェノベーゼパスタ: パープルラッフルバジルをたっぷり2カップ程度(約50g)、にんにく2片、松の実またはクルミ1/4カップ、オリーブオイル1/2カップ、パルメザンチーズ適量、塩少々をフードプロセッサーで攪拌し、自家製バジルソース(ペスト)を作ります。

ゆでたパスタに和えれば、紫色のペストパスタの出来上がりです。見た目の色は濃い紫がかった茶色になりますが、コクのある深い味わいが楽しめます。

バジルビネガー・バジルオイル: パープルラッフルバジルの葉を白ワインビネガーに漬け込むと、美しいルビー色のハーブビネガーが作れます​

サラダドレッシングやピクルス液に使えば爽やかな香りとともに彩りも添えてくれるでしょう。またオリーブオイルに生葉を漬けてバジルインフューズドオイルを作ることもできます。こちらはパスタやパンにつけるオイルソースとして重宝します。いずれも日常の料理にひと工夫を加えるレシピとしておすすめです。

この他にも、パープルラッフルバジルはピザのトッピング、スープの仕上げ、ジェラートやカクテルの風味付けなど用途は実に幅広いハーブです。

普通のバジルと同様に使えますが、加熱すると色が料理全体に移りやすい点に注意しましょう(パスタソースが暗い色合いになることがあります)。生のまま飾ったり、ソースに混ぜ込んだりして、その独特の色と香りを存分に楽しんでみてください。

パープルラッフルバジルの美容・健康効果

パープルラッフルバジルは、見た目や香りだけでなく栄養面でも優れたハーブです。特に紫色の葉にはポリフェノールの一種アントシアニンが豊富に含まれており、抗酸化作用が期待できます。抗酸化物質は体内の活性酸素を抑制し、細胞の老化防止や美容効果(美肌づくり)に役立つとされています。

また、バジル特有の精油成分(例:エゴノールやリナロール)は抗炎症・抗菌作用を持ち、古くから民間療法で消化不良の改善やリラックス効果に用いられてきました。

実際、パープルラッフルバジルの葉を使ったハーブティーは胃の調子を整え消化を助けると言われています。 栄養素の観点でも、バジルは「ハーブの王様」と呼ばれるほど多彩なビタミンやミネラルを含んでいます。パープルラッフルバジルにもビタミンA・B6・C・Kや鉄、カルシウム、カリウムなどがバランス良く含まれています。

ビタミンAは抗酸化作用が強く、視力の維持や皮膚・粘膜の健康に不可欠です。特にバジルはβカロテン(プロビタミンA)の供給源として優れており、100gあたりの含有量は成人の1日必要量の約1.75倍にもなります。

ビタミンCも含まれ、免疫力の強化や美肌効果が期待できます。さらにビタミンKも豊富で、血液の凝固や骨の健康に関与します。 ミネラルでは、鉄分が含まれるため貧血予防に、カルシウムは骨や歯の強化に寄与します。カリウムも適度に含まれるため、余分なナトリウムの排出を助けむくみの解消(デトックス効果)に役立つでしょう。

これらの栄養成分はごく少量のバジル摂取でも摂り入れることができるため、料理の風味付けと同時に健康増進にも一役買ってくれます。総じて、パープルラッフルバジルは抗酸化作用によるアンチエイジング効果やビタミン・ミネラル補給による美容・健康サポートなど、多方面で期待できるハーブと言えます。

パープルラッフルバジルの栄養価

パープルラッフルバジルの栄養価は、基本的には一般的なグリーンのスイートバジルと同様です。ハーブであるバジルは非常に低カロリー(生葉100gあたり約23キロカロリー)で、脂質はごくわずかしか含みません。その一方で、ビタミンやミネラルを多く含有する点が特徴です。以下に100gあたりの主な栄養成分の例を示します​

エネルギー: 約23kcal(非常に低カロリー)
炭水化物: 約3g(うち食物繊維を含みます)
たんぱく質: 約3g(ハーブとしては比較的多め)

脂質: 約0.6g(ほとんど脂肪を含まない)
ビタミンA: 約5275IU(成人1日推奨量の170%以上)
ビタミンK: 約415µg(成人1日推奨量の300%以上)​

ビタミンC: 約18mg(20%程度)​
カルシウム: 約177mg(14%程度)
鉄: 約3.2mg(18%程度)

カリウム: 約295mg(6%程度)

※上記は一般的なバジル生葉の値であり、パープルラッフルバジル固有の数値ではありません。

紫系品種で特筆すべきはアントシアニン系色素を含む点で、通常の緑色バジルには少ないポリフェノールが豊富という違いがあります。一方、緑色のバジルはβカロテン(ビタミンA源)を多く含むため、両者とも栄養価に優れつつ、それぞれ異なる抗酸化成分を持つといえるでしょう。

観賞用ハーブとしての価値

花壇に植えられたパープルラッフルバジル(中央の紫葉の植物)。濃い紫色の葉が他の草花と美しいコントラストを成している。 パープルラッフルバジルは、観賞価値の高いハーブとしてガーデニング愛好家からも注目されています。

濃厚な紫色の葉色と独特の葉形は花壇や鉢植えにおいて存在感があり、緑の植物と組み合わせると互いの色を引き立て合います。

例えば、緑葉のハーブや草花の間にパープルラッフルバジルを植え込むと、深みのある紫がアクセントとなり庭にメリハリが生まれます。

実際、園芸の現場でも「花壇ではコリウスと並ぶ美しさ」と評されるほどで、寄せ植えやボーダー花壇にも活用しやすい品種です。 葉だけでなく花も観賞価値があります。パープルラッフルバジルの花は夏にピンク色~薄紫色の小花が穂状に咲き、濃い葉との対比がとても華やかです​

花穂はそのまま切り花やブーケに加えても個性的で、おしゃれなハーブの彩りとして利用できます。また、花にはほのかな甘い香りもあり、庭に植えるとハーブガーデンらしい芳香が楽しめます。

咲いた花は摘み取ってハーブティーやサラダのトッピングにすることも可能で、鑑賞と実用の二重の楽しみを与えてくれるでしょう。 寄せ植えの相性も良好で、特にトマトとのコンパニオンプランツとしても知られます。

バジルとトマトは互いに生育を助け合う組み合わせと言われ、家庭菜園では定番のコンビです。パープルラッフルバジルをトマトの根元に植えれば、トマトの赤、バジルの紫、葉の緑が美しく調和し、実用性と観賞性を兼ね備えた菜園スペースが作れます。

そのほか、ペチュニアなどの一年草草花や、ピンクのバーベナとの相性も良いとの報告があり、カラフルなガーデンデザインの中で独特の存在感を放ちます。 さらに、パープルラッフルバジルは比較的暑さに強く、真夏の高温下でも葉色が映える点もガーデニング向きです。

耐暑性に優れ栽培期間が長いため、夏のガーデンを長く彩ってくれるでしょう。開花が遅く(抽苔しにくい性質)花が咲きにくいこともあり、葉を鑑賞する期間が長いのも利点です。総じて、パープルラッフルバジルは「食べられる花」として、見ても楽しく育てて使って美味しい、一石二鳥ならぬ一石三鳥のハーブと言えるでしょう。

パープルラッフルバジルの歴史と原産・品種背景

バジルは元々インドや古代ペルシアが原産とされ、世界各地で長い歴史を持つハーブです​

古来より「王家の薬草」とも称され、料理用のみならず薬用や宗教的な用途でも珍重されてきました。

そんなバジルには実に多くの品種・変種がありますが、紫色のバジル(パープルバジル)の系統は比較的新しく、人為的な品種改良によって生み出されたものです。代表的な紫バジルの一つダークオパールバジル(Dark Opal Basil)は1962年にAAS賞を受賞したことで広く知られ、深紫色の葉を持つ品種として人気を博しました。

パープルラッフルバジルはこの紫バジルの流れを汲む品種で、アメリカの種苗会社W.Atleeバーピー社にて育種家テッド・トーリー(Ted Torrey)氏によって開発されました。 テッド・トーリー氏は1970年代後半、大規模なハーブ育種プログラムの中でバジルの交配育種に取り組みました。

彼はまず緑色葉で葉縁が縮れた「グリーンラッフル(Green Ruffles)」という品種を作出し、続いてそれと紫葉の「ダークオパールバジル」とを交配することで、新たな紫バジルを誕生させました。

この新種がパープルラッフルバジルであり、1984年に品種登録されます。しかし種子の生産が軌道に乗るまでに時間がかかり、市場に十分な供給量が得られたのは1987年になってからでした。

奇しくも同年にはパープルラッフルバジルはAAS(オールアメリカセレクション)のハーブ部門を受賞し、風味と観賞価値の両面で高い評価を勝ち取ります。これは、当時既に著名だった親品種ダークオパールバジルにも匹敵する優良品種であることが認められた証と言えるでしょう。

その後、パープルラッフルバジルは世界中のガーデナーやシェフに受け入れられ、家庭菜園から高級レストランまで広く栽培・利用されるようになりました。

今日では、パープルバジル系統の代表格として、他の紫系バジル(例:レッドルービンやオスミンバジル等)と並び人気のハーブとなっています。特にパープルラッフルバジルは種から育てやすく形質が安定したオープンポリネイテッド品種であるため、家庭でも容易に採種・増殖が可能です​

その意味でも、観賞用・実用用ハーブとして長く親しまれていくことでしょう。

まとめ: パープルラッフルバジルは、その鮮やかな紫色の葉と豊かな香りで私たちを楽しませてくれる特別なバジルです。

栽培は比較的容易で、適切な環境さえ整えれば初心者でも育てられます。収穫した葉は料理の幅を広げ、美容や健康にも貢献してくれる嬉しい効能付きです。ぜひガーデニングやキッチンにパープルラッフルバジルを取り入れて、その一株で何度も美味しい魅力を味わってみてください。

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